記録と日常

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「絵を読み解く」言語からのアプローチ

美術館の小学生向け対話型美術鑑賞プログラムのボランティアファシリテーターの活動に参加し始めてから足掛け4年になるが、コロナ禍でプログラム自体が中止になったり、しごとの都合で予定が合わず参加できなかったり、実際に子どもたちの前でファシリテーターとして立てた機会は数えるほど。技術はいまだに未熟である。

 

そんな時に 対話しながら「絵を読み解く」【言葉のスキルアップトレーニング】というオンラインプログラムを見つけた。主催は元国語教師という北村江奈さん。高校で国語を教える中で対話型の指導を取り入れていた経験をいかし、言語の読解力・表現力を高めるために、絵をみることで「観察力」「分析力」「対話力」を養い実践する本講座を主催されている。美術ではないところから「絵」を読み解くアプローチ、というのが面白い。

どんな手法で絵にアプローチしているのだろう、VTSの参考になればと思いと受講することにした。

 

この講座では、まず、ざっくり作家と作品の時代背景が説明される(導入)。その後、講師の立てた問いに対して、鑑賞者は、意見とその根拠を述べていく。意見を聞き合い、他の人に意見を聞いて自分の意見をさらに展開して述べるシーンもあった。いくつかの問いを経て、最終的にこの絵のテーマは何だと思うか、という問いに答えることで、鑑賞者は、絵のテーマにたどり着けるし、他の人の結論を聞くことで思考を補完をできる。また、作品の背景が前提知識としてあるので、大きく逸脱することもなく、テーマにたどり着けず、モヤモヤして終わることもあまりないだろうと感じた。

 

いつも自分がやってるVTSでは、「この絵の中で何が起きていますか?」という問いからスタートする。この問いは、発言に制限が一切なく自由であるが、ときには、何から話していいかわからないと戸惑ってしまうこともあるだろう。けれど、この講座では、あらかじめ問いが設定されているから、とりあえず、何を見ていいかわからん!という状態にはならない。多分答えやすい。予め、そう思った根拠を述べて、と言ってるので鑑賞者は「自然と」根拠込みで思考する。

 

ファシリテーター目線だと、「何が起こっていますか?」と問うと、どんな答えが返ってくるか予想もつかなくて、思いもよらない発言で翻弄されることもある。それが面白いところなのだけど、技術の未熟な私などは、発言のどの部分に次の問いかけをして絵に近づけていけば良いのかわからなくなり、絵の中にある物探しで終わってしまうことが多い。この講座のようにある程度内容が限定された問いだと、ある物探しでなく、問いの範囲内ではあるが、様々な角度から意見聞くことができる。そして講師の立てた問いに従って答えていると、自然と、絵のテーマにたどり着く。鑑賞者は、あぁ、絵を「見た」「鑑賞した」という満足感も得られると思うのだ。

 

そして、この「問い」がすなわち、絵を読み解くキーワード=小見出しになっていて、鑑賞の肝なのだ。「テーマ」が読み解けるように「問い」を構成するために、講師もまた前もって絵を分析してるはず。(これは教師として授業準備の経験が生きている?と思いました)この作業が、私が研修でやった作品研究=ひとりVTSなのかな…と気付かされた。

 

VTSでは、さまざまな意見を聞く中で、ファシリテーターがバラバラな一つ一つの意見に、「時間の話」とか「季節について感じた」とか「描かれてる人が楽しそう」とか小見出しをつけ、同じ種類の小見出しの意見を結び付けて(Aさんは○○と言ってくれたけど、Bさんも××と言ってくれて同じように「△△」の話をしてくれましたね)という事実を場のみんなに伝えて、その絵についての読み解きを、場で共有して、その絵がどういう絵なのかみんなで考えるということをしている。

 

VTSをするときは、ある程度、作品についてどういう「小見出し」が立つのかということを研究しておくと、子どもたちの思わぬ意見に翻弄されないで、じっくり聞いて絵の本質に迫れるVTSができることは研修を通して知っていたけど、そもそも、その分析が苦手だったので、この講座で別のアプローチを体験して少しヒントが見えた。次のVTSに向けて、作品研究してみよう。参加してよかったー

 

www.street-academy.com

2022年1月22日受講。

 

ルノワールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」を鑑賞。

www.museumanote.com

 

 

北村先生のブログ

対話型美術鑑賞(VTS)|北村江奈|note