【映】あのこは貴族(2021/12/5)
(2021/12/5)
東京渋谷・松濤の開業医で末娘として生まれた華子。何不自由なく育ち、将来は良家に嫁ぐ人生を歩むのが当然と思って生きてきたが、すでに20代後半になり、いまだ結婚できていないことに焦りを感じている。かたや、美紀は地方で猛勉強の末、東京の名門大学に合格。入学するため上京するも、家庭の事情で学費が払えなくなり、夜の世界で働いているが退学。東京を引き上げるでもなくそのまま東京生活を続けている。そんな二人が、一人の男性を巡り、偶然に出会い、交錯し互いの人生が拓けていくというストーリー。
普通は三角関係の恋愛ドラマになりそうな設定なのに、ドロドロとした諍いが起こらず、ヒロインの二人が、互いの生き方を見て、自分の生き方を模索し納得した人生を勝ち得ていくところが、今までにない。女同士が理解し合い、図らずも助け合っていくシスターフッド映画である。
華子が属しているようなお金持ち階級の中で生きている人は、普通の世界にはあんまり出てこない、私立の名門大学とかに行ったり有名企業に行ったりすると、たまに出会いはするが、自分の人生に交わってくることはない。ところが美紀は、高級クラブやラウンジというお金持ちを顧客とするところに身をおいていたので、華子の婚約者となる幸一郎とは10年もの付き合いを続けていた。
美紀は幸一郎との腐れ縁を続けて行くこと、水商売からは足を洗ったものの東京生活をだらだら続けることに迷っている。幸一郎との縁をステップアップに繋げようとはしないところが今っぽいなぁと思う。階級違いは上手くいかない、世界が違う、無理はしないということを悟っているようにも見えた。
華子は華子で、幸一郎とのこれ以上ない縁談がまとまったにも関わらず、小さな違和感に戸惑い、その戸惑いが何なのか模索する。華子の違和感は、従来なら、なかったこと、気づかなかったフリでやり過ごすし日常に埋没していくところだったのだろうが、そこを見逃せなかったのは、個を尊重する現代ならでは、という感じがする。
(2021.11.23鑑賞@amazon prime)