記録と日常

学びと活動とつぶやきと。

国立新美術館「DOMANI・明日2020」展

もう先週のことだけど、DOMANI展見た。

サブタイトルが「傷ついた風景の向こう」




f:id:sasorizano:20200209051009j:image


 

災いが起きても時は流れる、その時、人は何を見ているのか、感じているのか、という問いに応えた作品を見せる、あるいは作品で応える展覧会。

 

もともと日高理恵子氏の「樹」を見上げて描くシリーズ目当てで足を運んだのだが、思いがけず、メッセージ性の高い展覧会で、他の作家にも出会えて良かったという充実感を得た。

 

日高理恵子。「樹を見上げてⅦ」


f:id:sasorizano:20200209051047j:image


展示室全体写真を取らなくて惜しい思いをしている。展示室の壁は、4面ぐるり日高氏の描いた見上げた樹に囲まれている。その中にいると森の中にいるような気分になるんですよ(実際は近所の神社の境内でスケッチした物がモチーフ)。絵の前にたったときの臨場感は是非本物で味わって…と言いたい。

 

日高理恵子氏は、30年以上ずっと樹を描き続けている。

 

初期には樹を遠くから眺める構図だったのが見上げるスタイルに。


f:id:sasorizano:20200209053124j:image

 

その後ずっと見上げている。

樹と向き合いながら、自分と対話する。

それが近年は樹の向こうに見える空との距離に関心を移しているようだが、

 

私自身の身体、知覚、思考の変化とともに、対象としてきた木々もゆっくりと変化し、中には衰え伐採されたものもある。まさに生ある対象であり、木だったからこそ、空とともに見つづけることができたのだと思う。

 

という作家の言葉にはっとする。

展示室では気づかなかったのだけど(図録を見て気づいた)、同じ構図で時違いの作品が並ぶ。長年見てきたファンはもちろんだが

、この場に身を置くことで、時の流れ中で自分は生きていると人生に思いをはせることのできる空間になっているのではないか。

 

次に提示された宮永愛子氏の「景色のはじまり」。


f:id:sasorizano:20200209061932j:image

 

金木犀の葉からとりだし脱色された葉脈は微かに薄い黄色。日本中から集まり6万枚。繋合わせ、重なりあう事で広大な1枚の織物のようなシートを成して、天井からカーテンかベールのように吊るされた。展示室は淡いオレンジ色の暖かな空間になっている。

その制作過程について読むと、1枚の葉脈に宿る個人の生、営みに思い至る。個から多へ。時の流れから、空間の広がりへ。

 

この空間に来るまでに、傷跡、戦争、環境破壊、災害と様々な「傷」に向き合う作品を見てきて、自然や時の厳しさを目の当たりにするわけだが、この二人の作品に会うことで、優しさという反面も見ることになる。

 

そしてエピローグ、畠山直哉氏の「再生に向かう風景」。津波被害その後の風景写真のシリーズ。津波でに流されず立ち続けた木、7〜8年後の姿を写し出す。被災直後の生々しい痛みとは違い、周囲の瓦礫はもちろん取り去られ、雑草も生え始め、整備工事も進んで整然としている。悲しみの中にも何とか前へ、いう空気が見え、この展覧会のエピローグにふさわしいと感じた。

 

圧巻。

久しぶりにひとつひとつじっくりと見た展覧会でした。たまたま夜間開館の時間帯に行ったのもよくて、行きつ戻りつしながらじっくり鑑賞できました。おすすめ。

 

DOMANI・明日2020 

傷ついた風景の向こうに

"The Art of Tomorrow" Exhibition 2020 日本博スペシャル展

 

〜2/16(日)まで

国立新美術館(乃木坂)

開館時間 10時〜18時、金土は20時まで

2/11(祝)は開館で翌2/12(水)が休館